こんにちは、えつみんです。
世界的に物価が上がってきました。海外では利上げでインフレを抑制しようとしていますが、日本はまだ金融緩和を継続。日米の金利差が拡大して、円安に振れています。
日経平均株価も急に上昇し33,000円を超えました。かといって景気が良くなった訳でなく、給料は上がらないし、むしろ社会保険料がアップし手取りは減る一方です。
日本はこのまま、デフレ継続か、インフレに突入するのか、はたまた、スタグフレーション(物価上昇と景気後退が同時に起きる)になってしまうのか、気になります。
最近読んだ本『世界インフレの謎』(渡辺努氏著)の中に、いくつか目からウロコの話があったたので、そのエキスと私の感想を紹介します。
1.世界的インフレ
これまでインフレは、需要が強くなることで起きていたが、今のインフレは、コロナ禍をきっかけに「供給不足」によって起きている。これは今までほとんど経験がない。中央銀行は、利上げでインフレを抑えようとしているが、供給不足に対しては利上げは効かず、コントロールが難しい。
2.日本の慢性デフレの原因
日本は以下の賃金・物価スパイラルに陥って、慢性デフレが続いてきた。
①生活者の生計費は、前年とほぼ変わらず
⇒②労働者は、賃上げがなくても生活を維持
⇒③企業は、人件費を上げなくてもいい
⇒④企業は、商品の価格を据え置き
⇒①へ
つまり、生活者は毎年物価が上がらないので、賃金が上がらなくても我慢する。企業は競争のため商品価格を上げられず、賃金も上げられない。
このサイクルが続き、生活者は「値上げ嫌い(少しでも安い店で買う)」、企業は、「価格据置き慣行」という行動が定着し、賃金も物価も上がらない慢性デフレが定着。
その結果、日本経済は停滞し、気づいたら世界との格差が拡大していたということですね。
3.いま日本は急性インフレ+慢性デフレ
日本は現在、急性インフレで一部商品の価格が上がっている。一方でまだ価格据置きの商品もあり、賃金も上がらない。という慢性デフレ状態が続いている。今後、このままスタグフレーションに陥るのか、それとも物価も賃金も安定的なペースで上がり、適正なインフレになるのか、その帰路に立っている。
4.慢性デフレ脱却の処方箋
前述の賃金・物価スパイラルを抜けるための処方箋は「賃金解凍」。
①労働者は、生計費補填のため相応の賃上げを要求
⇒②企業は、賃上げを行う(人件費が上がる)
⇒③企業は、人件費増分を毎年2%価格に転嫁
⇒④生活者の生計費は、毎年2%上昇
⇒①へ
このサイクルが実現できれば、デフレ脱却は可能。大事なのは、2%のインフレ目標を、全ての関係者が認識して、それに基づく行動をとることが重要と説きます。
かつて異次元緩和をしたときにも、インフレ目標を掲げていました。しかしこの時は、
①金融緩和によって企業の業績を上げ、
⇒②企業は増えた利益で賃金を上げ、
⇒③生活者は消費を拡大
⇒④緩やかに物価上昇
というシナリオでした。(上から滴り落ちるトリクルダウンと呼んでいましたが、ちっとも生活者に落ちてきませんでした)
先ほどの賃金解凍とは、きっかけが違いますよね。企業は、利益が出ても剰余金に回し賃上げしたくない(これがホンネ)。生活者は、賃上げされたとしても、将来不安のため貯蓄に回したい(これがホンネ)。従ってこのサイクルは、重たくて回りにくいのだと思います。
5.賃金解凍に向けた3つの鍵
賃金回答には次の3つが重要。
1)物価は上がるという予想が共有され、賃上げ要求の正当性が社会に広まること
2)賃上げに伴う人件費の増加分は価格に転嫁できる、と多くの企業が考えること
3)労働需要のひっ迫が日本でも起きること
今、慢性デフレの中で、急性インフレという新たな病気にかかりつつあります。しかしそれによって慢性デフレを克服できる可能性があると、著者は言います。まずは、国民皆が「インフレ予想」をして、値上げ嫌い、価格据え置き慣行をやめることから。
まとめ
この本を読んでいろいろ考えさせられました。日本はずっとデフレが当たり前の感覚が染み付いてきました。気づいたら、この30年で世界との格差が広がっていたのです。
私も会社では、経費削減と叫び、取引先には値引きを要請してきました。実はこれをやりすぎると、自らの首を絞めるということに気づきました。皆がそれをやると、お互いに利益が減って価格転嫁もできず、デフレの道まっしぐら!です。企業成長の王道は、商品・サービスの付加価値を上げて、利益を上げることです。
毎年2%のインフレが起きるだろうと、皆が思って行動することがデフレ脱却の鍵。という話にはなるほどと納得しました。緩やかなインフレによって、賃金上昇と物価上昇がバランスよく続けば、私たちの生活は今より豊かになっていくと期待したいです。
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