サラリーマン雑学@えつみん

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デフレの真犯人を読んで

こんにちは、えつみんです。

北野一さん著「デフレの真犯人 脱ROE革命で甦る日本」を読みました。今日はこの中からごく一部ですが、目からうろこの話をします。

 

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1.利益はコスト⁉️

今回一番の目からウロコ。

企業が事業活動によって生み出した利益は、実は株主が提供した資本に対する見返り分である。つまり企業が株主へ支払うべき金利のようなものであり、コストの一つである。

 

★今まで私は、利益=コストという発想はありませんでした。確かに企業は株主から資金を預かり、そこから生み出した利益から配当金を彼らに支払います。最近の企業は内部留保としてため込んでいますが、本来は株主がもらえる権利であり、企業からみるとコストなんですね。

 

2.売上はステークホルダーで山分け

企業のステークホルダー、つまり利害関係者には下記のような参加者がいて、全体の売上高に対しては、カッコ内のコストがかかっている。

•取引先(売上原価)

•従業員(販売費・一般管理費)

•銀行(営業外費用)

•政府(法人税等)

•株主(純利益)

 

次のように言い換えると、右辺はステークホルダーの取り分ともいえる。

•取引先=販売額

•従業員=賃金

•銀行=利息

•政府=税収

•株主=配当金

 

★この中で、どのステークホルダーが強いでしょうか。春闘が激しかったときは従業員、銀行の貸出金利が高い時は銀行が強かったのですが、今は株主の声が強くなり、多くの見返りを要求するようになりました。

ここで重要なことは、全体の売上高が増えない状態で、株主の取り分が増えれば、他の取り分が減るということです。弱い立場の取引先へは値下げを要求し、従業員へは賃金を上げずに我慢してもらうということになります。

 

3.デフレ脱却の処方箋、脱ROE

ROEとは、利益を株主資本で割った数字。つまり株主の投資に対して何%の利益を出したかというもの。

バブル崩壊以前の日本では、ROEはほとんど意識されなかった。株式は企業同士で持ち合いをしていたので、ROEは0%でよかった。ところが外国人投資家が増えてくると、欧米並みのリターン(8%以上)を要求するようになった。

デフレ脱却のためには、ROEよりも売上高を重視する方向に変えるべき。売り上げというパイを大きくして、さまざまなステークホルダー、つまり労働者や下請け企業、債権者や政府にも還元し、皆の満足感を高める経営へ転換することが必要ではないか。

 

★投資家は、自分への利益を増やせと当たり前に要求しますが、デフレの中では企業活動を萎縮させ、結果的に利益を減らしているのではないでしょうか。コストダウンには限界がありますが、売り上げ拡大には限界がありません。「小さくなっていくパイを取り合うのではなく、パイを大きくしよう」

 

まとめ

この本は2012年に書かれた本です。失われた20年と言われた時ですが、それから10年経ってもデフレは続きました。金融緩和を継続し、円安、株高にはなりましたが、賃金は上がりません(コロナ禍をきっかけに世界はインフレ基調になりつつありますが)

欧米基準の経営(効率重視)から、今こそ日本基準の経営(長期的成長、三方よし五方よし)に舵を切る時だと思います。私も自戒をこめて「効率アップ」ばかり言わないようにします。